大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(ネ)2653号 判決

一、なお、民法第一六〇条は、時効期間経過前六ケ月前に相続財産算理人の選任された場合の規定であつて、右説示のごとく被控訴人の取得時効完成後管理人が選任された場合にはその適用のないものというべきであるから、右時効完成の時期は、前記管理人の選任により異同を生じない。

二、しかし、時効完成の要件である所有の意思をもつてする占有は、自主占有のみに限定すべきものではなく、占有者本人において所有の意思を有する以上、他人が占有者本人のためになす代理占有をも包含するものと解すべきはいうまでもないところ、右二の認定事実に徴し、被控訴人主張のように、被控訴人はその所有に帰したと信じた大手通の土地上に、建物を建築所有した夫の徳造に対し、右土地の使用権を与え、徳造は右土地につき所有の意思を有する被控訴人のためこれを代理占有しているものとみられる(なお、右使用権がいかなる性質を有するものか、又被控訴人が右土地上の建物において書店を経営することによりこれを直接占有するに至つたのではないかとも解せられるのであるが、これらについてはいずれも被控訴人が右土地を所有の意思をもつて占有していることには影響を及ぼさないから、この点については論及しない。)から、被控訴人において所有の意思をもつて、右土地を占有しているとなすに欠けるところはない。

三、控訴人は昭和二二年三月頃以降、被控訴人及び徳造らに対し、しばしば本件土地は控訴人が酒井嘉一郎から買い受けたもので、被控訴人らの占有は不法である旨を告げて、その明渡しを求めたにかゝわらず、被控訴人らはこれに応じないから、その占有は平穏でないと主張する。しかし、民法第一六二条所定の平穏な占有とは強暴な占有に対する語であつて、占有者が暴行強迫によらないで占有を取得することをさすものであるから、たゞ単に他人がその占有の不法なることを主張し明渡しを求めた(なお、控訴人は本件土地を買い受けたものでないことは前記四、に認定のとおりであるから、被控訴人らにその明渡しを求める権利を有していない。)だけでは、これがため直ちに平穏でないということはできない。従つて、控訴人の右主張は理由がない。

(二宮 奥野 大沢)

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